〜時代に乗り遅れないための近代的マーケティングとは〜

第10話 令和の最新マーケティング手法

 

関係性マーケティング

 

関係性マーケティングの目的

近年では、市場が成熟化しており、単に高機能な製品を作り、販売促進を熱心に行ったとしても必ずしも売れない時代になっています。
このような状況の中、大量の広告費などの費用をかけて顧客を新規開拓するよりも、既存の顧客との関係を深めることで顧客を維持し、収益を確保しようという関係性マーケティングの考えが登場してきました。

関係性マーケティングはリレーションシップマーケティングとも呼びますが、顧客との双方向のコミュニケーションなどにより関係性を深めて、顧客を維持していくことが目的です。

関係性マーケティングは、新規顧客の開拓よりも、既存顧客の維持の方がマーケティングコストを削減でき、収益性を高められるという考えを前提としています。
また、20%の顧客で80%の売上を稼いでいるという、80対20の法則に基づけば、20%の優良顧客を維持した方が、収益性を高められるということになります。

 

CRM(Customer Relationship Management)

このような近代的な考え方に基づいて顧客との関係性を構築する手法が、CRMです。

CRMは、顧客との関係を深めることで、顧客ロイヤリティを高め、収益を拡大しようとするマーケティング手法です。
CRMでは、収益性の高い顧客を明確化し、その顧客に対して最適なマーケティング・ミックスを適用していきます。

 

◇ライフタイムバリュー(LTV)

ここで重要となる考え方が、ライフタイムバリュー(LTV):顧客生産価値です。

ライフタイムバリューは、1人の顧客が長期間にわたってもたらしてくれる利益の合計です。
ライフタイムバリューの高い顧客は、企業に高い利益をもたらしてくれる優良顧客です。
こういった、優良顧客に対して優先的に対応することで、企業の収益性を高めることができます。

 

◇RFM分析

また、優良顧客を判別する分析方法として、RFM分析があります。

RFM分析は、3つの指標で顧客分析をします。

その指標とは、
・最新購買日(Recency)
・購買頻度(Frequency)
・購買金額(Monetary)
です。
3つの頭文字を取ってRFM分析と呼ばれます。

RFM分析では、この3つの指標をポイント化し、顧客ごとにポイントの合計を算出していきます。
例えば、最新購買日が最近であり、購買頻度が多く、購買合計も多い顧客は、最も高いポイントとなります。
高いポイントの顧客は、多くの収益をもたらしてくれる優良顧客であるため、優先的にコストをかけてプロモーションなどを行います。

 

◇FSP

ここで、優良顧客に対して、優先的にプロモーションを行う手法が、FSP(Frequent Shoppers Program)です。
FSPは名前通り、頻繁に購入してくれる顧客に対するプログラムです。

例えば、航空会社ではマイレージプログラムによって、頻繁に利用してくれる顧客に対して実質的な割引を提供しています。
これにより、優良客を囲い込むことが狙いです。

 

 

ワントゥワンマーケティング

 

次に、ワントゥワンマーケティングを見ていきます。

ワントゥワンマーケティングは、顧客に個別に対応していくマーケティングです。
従来のマーケティングは、顧客を集合といて扱うますマーケティングでしたが、ワントゥワンマーケティングは、顧客の個別のニーズに対応していく、1対1のマーケティング手法です。

これは、近年では顧客のニーズが多様化していることと、ITの発展によって顧客への対応が実現できるようになったことが背景として挙げられます。

 

ワントゥワンマーケティングの目標

ワントゥワンマーケティングでは、顧客シェアを高めることを目標とします。
顧客シェアとは、1人の顧客が購入する金額の中で、自社が占める割合です。
例えば、ある人は年間10万円分ビールを消費するとします。
そのうち特定のブランドへの消費が5万円であれば、このブランドの顧客シェアは50%です。

マスマーケティングでは、市場シェアを高めることが目標でしたが、ワントゥワンマーケティングでは、顧客シェアを高める、つまり顧客を囲い込むことが目標となります。

 

ワントゥワンマーケティングの手段

ワントゥワンマーケティングでは、たくさんの顧客に対して個別にニーズを把握し、最適なマーケティングプログラムを実行する必要があります。
そのため、通常この手法ではITの活用が必須となります。

 

◇データベースマーケティング

ワントゥワンマーケティングを支える手段の1つは、データベースマーケティングです。
データベースマーケティングでは、顧客データベースを活用して、見込み客の発見から購入、さらにリピーターへの育成を行うためのマーケティングプログラムを実行します。

顧客データベースには、顧客の様々な属性が格納されます。
例えば、性別、年齢、職業、所得などのデモグラフィックデータだけでなく、趣味やパーソナリティ、購入履歴などの各種の属性データを充実させることで、個別対応を可能にします。
例えば、顧客の購買金額に応じて割引を提供したり、過去に購買した商品に関連する商品を推奨したりすることが可能です。

 

◇マスカスタマイゼーション

また、ワントゥワンマーケティングを支えるもう1つの手段として、マスカスタマイゼーションがあります。
マスカスタマイゼーションは、大量生産のスケールメリットを生かしながら、顧客ごとにカスタマイズを図る手法です。

例えば、スーツのオーダーは、従来は顧客ごとに完全に個別対応するフルオーダーだったので、非常に高価でした。
しかし、最近では、いくつかのパターンから型を選択したり、細部を指定したりすることができるイージーオーダーが登場し、比較的安い金額で自分の好みに合わせたスーツを作ることができるようになりました。
こうすることで、従来の既製品では満足できないが、フルオーダーほどお金をかけたくない、という顧客を取り込むことができます。

このように、マスカスタマイゼーションでは、IT技術などを使いながら、低コストで個別対応をしていく狙いがあります。

 

 

サービスマーケティング

ここまでは、物理的な製品と無経済のサービスを分けずに学習してきました。
サービスの場合でも、基本的なマーケティングの考え方は、物理的な製品と同じです。
ただし、サービスならではの特徴やマーケティングの留意点もあります。

 

サービスの特性

サービスには物理的な製品とは異なる4つの特性があります。

  • 無形性
  • 不可分性
  • 変動性
  • 非貯蔵性

 

◇無形性

無形性とは、非有形性とも呼ばれますが、サービスは目で見たり触ったりできないということです。
例えば、パッケージ旅行は、事前に見たり触ったりできません。

◇不可分性

不可分性とは、同時性とも呼ばれますが、サービスは生産と消費が同時に行われ、サービスを提供する人がその場にいなければならないということです。
例えば、美容室では美容師がその場で散髪などのサービスを提供する必要があります。

◇変動性

変動性とは、サービスの提供者やタイミングによってサービスの品質が変わってしまい、品質の均一化が難しいということです。
例えば、美容室では美容師により質が異なります。また、同じ美容師でも日によって質が変わることがあり得ます。

◇非貯蔵性

非貯蔵性とは、消滅性ともよっばれますが、サービスは貯蔵することができず、サービスが提供された後に消滅してしまうことを指します。
例えば、美容室のサービスを、あらかじめ貯蔵しておくことはできません。

このように、サービスには物理的な製品と異なる特性があるため、これらを考慮に入れたマーケティング活動を行っていく必要があります。

 

サービスの品質評価

《SERVQUAL》
サービス(Service)と品質(Quality)を組み合わせた造語が、SERVQUALです。
これは5つの面からサービス品質を評価するものです。

  1. 信頼性(Reliability):約束されたサービスを確実に提供すること
  2. 対応性(Responsiveness):顧客に迅速にサービスを提供すること
  3. 確実性(Assurance):従業員のしっかりした知識と対応の丁寧さ
  4. 有形性(Tangibles):施設、設備、従業員の外見
  5. 共感性(Empathy):顧客に対する気遣いや注意

※これらを1つずつ確認する!

 

 

サービスマーケティングの7P

マーケティングの4Pは製品、商品のマーケティングには適応できますが、無形であるサービスに対しては不十分と言えます。

 

《4Pの復習》

  • Product(プロダクト:製品)
  • Price(プライス:価格)
  • Place(プレイス:流通)
  • Promotion(プロモーション:販売促進)

そこで、サービスマーケティングでは4Pに加え、Personnel(人・要員)、Process(業務プロセス・販売プロセス)、Physical Evidence(物的証拠)の3Pを加え、7Pを適用することになります。

4P
・Product(商品・サービス)
・Price(価格・プライシング)=価格戦略
・Place(流通・チャネル)=流通戦略
・Promotion(販促・プロモーション)=販促戦略

追加の3P
・Personnel(人・要員)

・Process(業務プロセス・販売プロセス)・Physical Evidence(物的証拠)

Personnel(人・要員)

Personnelは自社のビジネス環境において、従業員、関係者、協力会社等までを含めた顧客にサービスを提供する全ての要員を指します。顧客にとってサービスの提供者が自社の社員なのか協力会社の従業員かは関係ありません。どの人員においても自社の管理下において顧客に満足されるようなサービスを提供しなければいけません。

 Process(業務プロセス・販売プロセス)

Processとは顧客にサービスを提供する様々な方法を指します。ハイクオリティーなサービスを提供するためには、例えばカスタマーセンター等ではCRMの改善や効率化が求められますし、支払い方法の改善のためには販売プロセスを見直していく必要があります。

 Physical Evidence(物的証拠)

Physical Evidenceは平たくいえば安心・安全保障を顧客に提供することです。証明書や契約書だったり、食品の生産者を明記するトレーサビリティーだったりなど、顧客の不安を取り去って保障を可視化するようなサービスを提供します。

以上が7Pの要素となりますが、企業は収益を上げていくために7Pのどれを強化していくかを考えていく必要があります。こうした7Pのマーケティングミックスは実践する上で、順番は特に重要ではありませんが、それぞれのバランスや相乗効果、一貫性といったつながりを踏まえていく必要があります。目標を達成するために7Pの何と何を強化して組み合わせれば、競合他者との差別化が図れて優位性が築け、最大効果が得られるかを考案するためのフレームワークなのです。

 

7Pの活用事例

東京ディズニーリゾートのサービスマーケティング

近年はテーマパークや遊園地などのレジャー消費が好調で、消費者の消費行動が「物」から「サービス」へとシフトしています。その中で圧倒的な入場者数、売上高を誇るのが東京ディズニーリゾートです。2013年以降はコンスタントに3000万人以上の来場者がいます。約9割のリピート率を持ち、顧客満足度が高い東京ディズニーリゾートでは、次のような7Pを実践しています。

Product(商品・サービス)

「非日常的な経験」の提供を商品コンセプトに掲げ、ミッキーマウスをはじめとするオリジナルキャラクターがファンタジーとノスタルジーを提供しています。

 Price(価格)

オリエンタルランドは入場者数の増加に合わせ、2013年から3年連続でパスポートを値上げしてきました。入園者数の抑制とパークの混雑緩和や将来的なパークへの投資資金確保を理由にあげています。値上げをしても大台の3000万人は今のところ維持されていますが、値上げ前の入場者数の伸びと比較すると鈍化しているように見受けられます。実際2015年、2016年は2014年を下回っています。ディズニーは一人当たりの客単価をあげることで入場者数の減少をカバーする収益をあげていますが、値上げだけして質を落としては顧客離れを起こしてしまいます。現在ディズニーは大ヒット映画「アナと雪の女王」の新テーマゾーンを含む大型リニューアルを準備していますが、値上げ分で投資を行っています。

 Place(流通)

東京ディズニーリゾートの立地は日帰り可能な半径50km以内に3000万人以上の顧客層がいる理想的な条件にあります。開園にあたってどこで営業するのか「流通」を徹底的に精査しています。

 Promotion(プロモーション)

ディズニーは独特なプロモーション戦略をしいています。トレードマークであるミッキーマウスは「一人しかいない」というコンセプトのもとに、世界中のディズニーリゾートとあわせて可能な限り同時には存在しないように工夫しています。あくまで「ファンタジー」を提供するコンセプトを貫くプロモーション体制をしいて一貫性を持たせています。

 Personnel(人員)

ディズニーリゾートで働く従業員は「キャスト」と呼ばれ徹底した教育体制をしいています。キャストは基本1年契約でマンネリ化しないようにし、分業体制をとることで各自の役割を完璧にこなすようにしています。

 Process(サービスの提供プロセス)

ディズニーでは標準化したサービスではなく、顧客ごとにあわせたサービスが提供できるよう工夫を凝らしています。一例として、身長制限にかかってしまった子供には次回来園した際は待ち時間なしで乗り物に乗ることができるパスを発行しています。他にも障碍者、外国人など顧客の状態にあわせてより良いサービスが提供できるような体制をしいています。

 Physical Evidence(物的証拠)

施設のデザインや物の配置・色などの物的な要素にもコンセプトである非日常を演出するための工夫が凝らされています。例えば建物の比率をわざと変形させていたり、外部の現実世界を目にさせないため、商品や食材を運び込むトラックなどの輸送車は地下通路を通行させていたりなどの設計がされています。

 

 

〜完〜